共通規格というものにつきましては、いちユーザー側からするとその意義が分かりにくいこともあるでしょう。しかし、「こういう未来を皆で目指していこう!」という呼びかけだと考えると分かりやすくなるかもしれません。

スマートロックの共通規格 Aliroがどういう未来を目指そうとしているのか、に注目しつつ、Aliroを紹介していきます。

Aliroとは?

Aliro 1.0は 2026年2月に正式リリースされたスマートロックに関する共通規格です。

Aliroを運営するのは Connectivity Standards Alliance (CSA), この標準化団体はこれまでにも Matter や Zigbeeなど、スマートホームに関連する通信規格を扱ってきました。

CSAのメンバーの中で Aliroの制定を主導してきたのは、スマホメーカーとして Apple, Google, Samsung. 錠前メーカーとして Assa Abloy, Last Lock. シリコンベンダーとして Infinion Technologies, STMicroelectronicsなどです。

デジタルウォレットを利用したスマートロックの開錠を可能にし、あらゆる場面で安全かつスムーズな体験を可能にするとともに、開発製造における複雑さを排除して、市場投入までの時間短縮を目指す、としています。

ユーザー体験

ユーザーとして気になるところは、「結局、何がどう良くなるのか?」というところでしょう。

Aliroの最終的な目的は、自宅、オフィス、大学、旅行先のホテルなど、あらゆる場面でスマホが鍵になる世界の実現です。その世界の中でスマホとスマートロックが上手く連携できるように共通の通信プロトコルを定めました。

また、ユーザーが安心してスマートロックを使えるよう、Aliroに対応したスマートロックは以下のような特徴を有します。

・スマホの電源が切れてしまったときでも開錠できる
・スマホ紛失時にはすぐに鍵としての機能を停止できる
・不正な侵入を防ぐ強固なセキュリティ

Aliroにおけるスマートロックの基本的な開錠方法はスマホを近づけてタッチする方式で、鉄道の改札やバスの出入口で使われるものと同じです。また、今はまだ対応機種が少ないですが、スマホが近づくだけでハンズフリーに開錠する方式も採用しており、将来的にはもっと使いやすくなっていくでしょう。

ウォレット上のデジタルキー

Aliroの中でスマートロックを開錠する鍵となるのは、ウォレットアプリ内に保存されるデジタルキーです。例えば、iPhoneでは Apple Home Keyという名称になっています。

このデジタルキーはスマートロックをスマホに登録する際、ウォレットアプリ内に自動で作成され、対応するスマートロックの鍵となります。

このデジタルキーの特徴は他人との共有やその共有の解除が簡単にできるということです。オフィスのスマートロックであれば社員に鍵を配るのが簡単になりますし、旅行先のホテルであれば期限付きの鍵を渡し、チェックインやチェックアウトの手続きを簡易化できます。

この辺りにことについては別記事でも紹介しましたので、こちらも是非ご参照ください。

Matterとの棲み分け

スマートホームに関する共通規格としては Matterというものが既に使われていますが、Matterと Aliroの違いはどこにあるのでしょうか?

Matterが「あらゆるスマートホーム製品」を対象としているのに対し、Aliroが対象とするのは「スマートロックとスマホ」のみ。大まかに言えば Matterと Aliroでは対象とする範囲の大きさが異なり、Aliroの方がより狭い対象へフォーカスしています。

また、Matterは「あらゆるメーカーのデバイスが柔軟に連携できること」を目的とするのに対し、Aliroの目的は「スマホをあらゆる場面で使える便利な鍵にすること」です。共通点は「便利なみらいの暮らしを目指す」ということぐらいで、全く別ベクトルの目的を持つ規格と言えるでしょう。

こうした目的の違いから、用いられる通信技術も変わってきます。

Matterでは、近距離通信だけでなく、インターネットを介した通信も重要になってきます。

一方の Aliroはスマートロック – スマホ間の 1対1の通信方式のみをサポートします。インターネットは関係ありませんし、スマートロックとスマホ以外の第3の機器が登場することもありません。

Aliroが採用する通信方式

Aliroの中でスマホとスマートロックが通信する方法は 3種類で、NFC, UWB, BLEがあります。

最も通信距離が短いものが NFC(Near Field Communication;近距離無線通信), これは改札やタッチ決済に使われている技術で、触れ合うくらいの短い距離で情報のやり取りがなされます。クレジットカードのような発電をしない物体に対しても、もう片方から電力供給することで通信が可能です。

次に短いものが UWB(Ultra Wide Band;超広帯域無線通信), 10m程度の範囲内で物体との正確な距離や方向が分かります。現在でも AirTagなどの紛失防止タグとの通信に使われており、外出時の自動施錠などをサポートします。

最も通信距離が長いものが BLE(Bluetooth Low Energy), 無線イヤフォンなどに使われている Bluetoothの省エネ方式です。数十m以内のデバイスを検知することでスマートロックの誤開錠を防ぐとともに、ハンズフリーな開錠を可能にします。