日本でイマイチ流行っていないスマートロックですが、海外、特に欧米ではどのように使われているのか気になったので調べてみました。
欧米のドア
私たちが思っている以上に日本のドアやドア錠というものは世界の中で特殊でして、これは日本の伝統的な家屋に見られる横スライド式のドア(引き戸)に限ったことではありません。私たちが普段「ドア」と呼ぶような、前後に開閉するドアについても言えることです。
まず、欧米のドアは内開きを基本とします。つまり、屋外から屋内へ入るときはドアを家の内側へ押して入っていきます。
この構造は外からの強硬な侵入を防ぐことを目的としています。内開きのドアであれば、内側から体重をかけたり、ドアの前に重量物を設置することで外敵の侵入を防ぐことが可能です。アメリカもヨーロッパと同じく内開きが多いそうですが、これはヨーロッパの伝統をそのまま受け継いでいったためでしょう。
ではなぜ日本が欧米型の伝統的なドア構造を受け継がなかったのかという話なのですが、これは「玄関で靴を脱ぐ」という習慣が関係しているようです。
靴を脱いだり、そこに靴を置いていったりするには玄関にそれなりのスペースが要求されます。内開きのドアでは、ドアの軌跡が描く領域の分だけ活用できるスペースが減り、玄関が手狭になってしまいます。よって、外開きを採用しているというわけです。

欧米の錠
ドアの錠についても違いがあります。
日本の場合、ドア外側(屋外側)には鍵穴があり、内側(屋内側)には手で回せる摘み部分(サムターン)がある形式が一般的です。この点、アメリカは日本と同じらしいのですが、ヨーロッパの一部地域では異なり、内側も鍵穴があって鍵がないと外に出られないようになっています。
泥棒視点だと、このような形の場合、ドアの近くの窓を割りサムターンを回して侵入することができなくなるため、防犯性は高まります。ただ、火事など緊急の際に家の中に閉じ込められる危険があるため、普段は内側の鍵を挿しっぱなしにして使うケースも多いそうです。
スマートロック普及率について
本題のスマートロックの話に移っていきますが、アメリカでのスマートロック普及率は、Research and Markets調べの市場調査によれば、10%程度らしいです。ヨーロッパの方はそれより少し少ないくらいだとか。
2022年には JEITA(電子情報技術産業協会)という日本の業界団体が日本でのスマートロック普及率を調べています。2万人にスマートロックを使っているか聞いて、「使っている」と答えた方が 1.2%だったそうなので、日本と比べれば欧米は格段に普及していると言えるでしょう。

日本でのスマートロックの主な利用場面が商業施設に留まる一方、欧米では住宅用に利用されることが多く、普及率の差を生んでいるよう。また、日本の賃貸住宅では錠を交換するのに大家さんの許可が必要で、この辺りのことも日本で普及が進まない理由と分析されています。
民泊事業
ここ 10年ほどで Airbnbを始めとしたデジタル民泊事業が随分広がり、海外旅行で当たり前にある選択肢の 1つとなりました。
これら民泊事業はスマートロックと相性が良く、スマートロック普及の後押しとなっているようです。というのも、デジタルデータとして家の鍵を転送すれば、物理的な鍵の受け渡しが必要なくなり、借りる側も貸す側も手間が省けます。
2024年には Yaleや Augustといったスマートロックの製造大手が Airbnbと提携し、手続きの簡素化や利便性の向上を目指す、と発表しました。
これから海外で Airbnbを利用する方は、スマートロックを見る機会も増えるかもしれませんね。
欧米のスマートロック大手
ここからは欧米で大きなシェアを占めるスマートロックメーカーを紹介します。
Assa Abloy
スウェーデンのセキュリティ企業 Securitas ABから分社した Assa ABと、フィンランドの船舶用エンジンメーカー、バルチラの子会社であった Abloy Oyとが経営統合して 1994年に設立されたのが Assa Abloy ABです。Abloy Oyの設立者はディスクタンブラー錠の発明者でもあります。
数多くの企業買収により技術を集約し、現在は電子錠や自動ドア、スマホのロック機能などが主力製品となりました。
買収、子会社化した企業には Yale, Kwikset, Augustなどが挙げられます。
Yaleは、ピンタンブラー錠の発明者らによって 1868年にスタンフォードで設立された老舗錠前メーカーです。色々あって 2023年には Assa Abloyが Yaleのアメリカ部門とカナダ部門を買収しました。
Kwiksetは 1946年に設立された Gateway Manufacturing Companyを前身とし、戦後需要を背景に錠前市場のシェアを獲得しました。近年でもキーパッド式の電子錠で大きなシェアを占めています。
Augustは 2012年に設立されたスマートロックメーカーです。アメリカで一般的な形状のドア錠を簡単にスマートロックに取り替えることができ、Apple Homekitなどのプラットフォームに接続できるという利便性から大きく売り上げを伸ばしました。2017年に Assa Abloyが子会社化を発表しています。
欧米のスマートロック市場では、この Assa Abloyが大きな存在感を放ちます。色々なスマートロックメーカーのブランドについて遡ってみれば、「あれも Assa Abloy、これも Assa Abloy」という感じ。
Level Locks
Levelの製品は「Invisible Smart Locks」、一見するとただのドア錠ながら、専用アプリや Matterを使って遠隔操作が可能なスマートロックです。もちろん、普通の物理鍵も使えます。

創設者の片方は日本人で、カリフォルニア州レッドウッドにて 2016年に設立されました。2024年9月に Assa Abloyが同社を買収、現在は Assa Abloy傘下です。
Schlage
Schlageはサンフランシスコにて 1920年に設立された大手錠前メーカーです。
2013年、他に先駆け、Amazon Alexaや Google Homeと互換性のあるスマートロックを開発しました。歴史がありながら、最新の技術を取り入れた挑戦的な製品を世に送り出し続けています。
そして、珍しく Assa Abloyと資本関係にありません。
Nuki
Nukiは特にヨーロッパのドア錠に対して後付けするタイプのスマートロックを開発しています。
先述の通り、ヨーロッパのドアには内側にも鍵穴があるのですが、ここに鍵を挿した状態で上から Nukiの製品を覆いかぶせることで、スマートロックに早変わり、という仕組みです。
スウェーデンなど北欧のドアはおしゃれな家具として日本でも人気で、日本向けに輸出される際には着脱式のサムターン錠がオプションとして売られている場合も。こうしたドアをお持ちの方は Nukiの製品を使うことで簡単にスマートロック化できます。
Nukiは 2016年に最初の製品を市場投入して成功を収め、現在のスマートホーム向けプラットフォーム(Apple Homekitや Google Home)への適応を進めてきました。海外では珍しい後付けソリューションが注目を集めています。