少しずつ使いやすくなってきたスマートホームですが、未だ初心者には難解なところがあり、その一つとして「Matter認証製品」と「Matter対応製品」の違いがあります。
Matter対応の製品は国内の一般ユーザーでも手の届くものが増えてきましたが、Matter認証製品の方はまだまだという印象。今後、Matter認証製品も増えてくると予想されますが、Matter認証製品が増えるとユーザー側にどんなメリットがあるのでしょうか。
今回は Matter認証製品と Matter対応製品で何が違うのか、スマートホームは今後どう便利になっていくのかについて紹介します。
スマートホームで出来ることと出来ないこと
近年のスマートホーム製品はスマートスピーカーやハブを介して、他社製品とも連携できるものが増えてきました。A社のスマートスピーカーが仲介し、B社のドアセンサーでドア開閉を検知、C社のスマートロックで鍵を閉める、というような使い方です。
ただし、他社間のデバイス連携については使ってみないと分からない部分が多々あります。自動化の際、どのデバイスが開始条件として設定でき、どのデバイスがアクションの実行に設定できるのか曖昧です。
例えば、CANDY HOUSEのスマートロック SESAMEにおける鍵の開閉は Google Home app上で開始条件に設定することはできません。一方、IKEAのスマート照明 TRÅDFRIは Google Home app上で開始条件に設定することができます。
自身で使ってみて初めて、「これってできないんだ」と学ばせていただきました。
Matter
SESAMEについては CANDY HOUSEが公開している API(外部ソフトウェアと連携するための仕組み)を使って、自動化の幅を広げられるようです。とはいえ筆者はプログラミングができる人間ではありません。
ただの家具を使うためにプログラミングを勉強しなければいけないというのも可笑しな話ですし、利用にあたってそれが必要なのだとしたら日本でスマートホームが普及することは永遠にないでしょう。当然、メーカー側も「プログラマ専用おもちゃ」のままでは広く売れないことは理解しているようで、より簡単で分かりやすい仕組み作りが業界全体で進められています。
その代表的な取り組みが Matterです。
Matterはスマートホームに関する共通規格であり、Matterに対応した製品であれば企業の垣根を超えてスマートホーム製品の連携を可能にします。ユーザー側に前提知識を要求せず、誰でも簡単に使えるスマートホームの実現を目指すものです。
Matter認証製品のデバイスタイプ
上記以外にも、Matterの良いところとして、「他社間のデバイス連携に関する情報」を製品購入前に調べられる点が挙げられます。
他社間で製品を連携して自動化を設定する場合、どの製品が開始条件として設定できる製品(クライアント)で、どの製品がアクションの実行として設定できる製品(サーバー)なのかを事前に知っておくことは重要です。
Matterにおいて、サーバーやクライアントとして機能するかどうかはデバイスタイプによって決まっています。例えば、On/Off Light というデバイスタイプは、サーバーとしての機能を有します。On/Off Light Switch というデバイスタイプであれば、クライアントです。デバイスタイプについては Google Homeのデベロッパーセンターで解説されているので、詳しくはそちらもご覧ください。
そして、購入したい製品が「Matter認証製品」であれば CSA(Matterの運営団体)のサイト上で製品のデバイスタイプを調べることが可能です。


上画像の製品はデバイスタイプが 0x000A (Door Lock) になっているため、サーバーとして機能することが分かります。
これによって、スマートホーム製品を買う前に他社製品と連携できるのかを調べられます。買ってから「これってできないんだ、、、」と後悔することがないわけです。
ただし、冒頭で述べた通り、現状では国内で流通している Matter認証製品がほとんどありません。上で紹介した IKEAのスマート照明も CANDY HOUSEのスマートロックも Matter認証製品ではないため、CSAサイトで検索してもヒットしません。
Matter対応製品
IKEAのスマート照明 TRÅDFRIの製品サイトを覗いてみると「Matter対応」と書いています。にも関わらず、CSAのサイトに登録されていないとはどういうわけでしょうか?
実は、TRÅDFRIは、「Matter対応製品」ではありますが、「Matter認証製品」ではありません。そもそも Matterで使われる通信規格は wi-fi, thread, ethernet の 3つであり、TRÅDFRIに使われる通信規格は zigbeeです。
Matter認証製品である IKEAホームハブ DIRIGERAを使って、他社のコントローラーで操作することはできますが、Matter認証製品同士の通信を行っているわけではありません。
いかがでしょう?ややこしくないですかね。
スマートホーム製品の種類を 1社に統一するならば特段難しいことはないのですが、他社間で連携させようとすると途端に考えるべきことが増えるな、と正直思いました。これによって様々な誤解が生まれているはずです。
今後
Matter認証製品がもっと増えていけば、上のようなややこしいことを考えなくても良くなっていくでしょう。同じメーカーの製品同士を連携させるように、他社間の連携も自然なものになっていくはずです。
気になるのは Matter認証製品が今後増えていくのかというところですが、例えば IKEAは 2026年1月を目途に Matter認証製品であるスマート照明などを発売すると発表しました。
IKEAはスマート照明で大きなシェアを持っているため、業界を牽引する力になることが予想されます。他社も同様に Matterの認証を積極的に取得していくことでしょう。
筆者のように、ろくにプログラミングができず、これから学ぶ気もない人間には大変嬉しい発表です。スマートホームはもっと便利で柔軟なものになっていくという期待を抱きつつ、動向を追っていきたいと思います。